城下町古町に位置する川上酒店の倉庫のリノベーション。

築造当初は下駄屋の店舗として建築されたもので築100年を経過する同酒店では、長く倉庫として使用していたが新しい店舗として改修することとなった。

当建築は間口3間、奥行き5間の大きさであり、2階の床梁が半間ピッチで並べられ、その中央付近に大梁が掛けられている典型的な町屋の様式を踏襲していた。

その圧倒的な梁と天井の存在感が何よりも際立っており、ここでは出来るだけ「何もしないこと」を心掛けた。

取扱商品はビール、ワイン、日本酒、焼酎と多岐に渡るが、オーナーはとりわけワインと球磨焼酎に深い思い入れがあった。ただ、ワインの横文字と焼酎の縦文字が並べられるのは少なからず違和感があった。両者を適度に分け、なおかつ繋がっていることを何よりも重視し、この地域での町屋の代表的なファクターである縦格子を活かすことにした。

縦格子によって柔らかく仕切り、そして対面とも関係が生まれるような空間構成が成立している。外観に関しても同様に縦格子の飾り棚を設け、外部に表出しつつも柔らかい関係が生まれるように意図した。

この建築によって町の景観に僅かながらでも貢献できれば幸いです。